認知症の中でも「治療で改善できる認知症」として注目される特発性正常圧水頭症(iNPH)。高齢者の転倒や認知機能低下が「年のせい」と見過ごされがちですが、実は適切な治療により劇的に改善する可能性があります12。薬剤師として、早期発見のためのチェックリストと専門的なアドバイスをお届けします。
目次
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特発性正常圧水頭症とは?
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3つの主要症状と早期発見チェックリスト
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iNPHグレーディングスケール
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診断と治療の流れ
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薬剤師からの専門的アドバイス
1. 特発性正常圧水頭症とは?
特発性正常圧水頭症(iNPH)は、65歳以上の高齢者の約1.6%が罹患する病気で、一部の診断医は「100人中7人程度」と指摘する場合もあります34。脳室に髄液が過剰に溜まることで脳が圧迫され、歩行障害・認知障害・排尿障害の3つの症状が現れます12。
見逃されやすい現状
重要な事実:
2. 3つの主要症状と早期発見チェックリスト
A. 歩行障害チェック(最も重要な初期症状)
□ 足があげづらく、小刻みに少しずつ歩く4
□ 少しガニ股で不安定な歩き方になる4
□ つまづきやすくなったり、不意に転んでしまうことがある4
□ 転回する時にふらつく4
□ 歩く時に第一歩が出ない、床に張り付いたような感覚がある4
□ 歩くことができない、または立つと不安定である4
歩行障害の特徴的なサイン
B. 認知障害チェック
□ 注意力、集中力を維持するのが難しい4
□ 最近、ものごとが覚えづらい4
□ 日ごろ習慣としていることや趣味などをせず、ぼーっとしてしまう4
□ 怒りっぽくなった4
□ 表情が乏しくなった4
□ やる気や自発性が低下した
認知障害の特徴
C. 排尿障害チェック
□ 最近、トイレが非常に近い4
□ おしっこの我慢できる時間が非常に短くなった4
□ おしっこを漏らしてしまうことが多くなった4
排尿障害の特徴
3. iNPHグレーディングスケール
日本正常圧水頭症研究会が作成した科学的な評価基準で、症状の重症度を客観的に判定します37。
歩行障害の評価
認知症の評価
スコア | 症状 |
---|---|
0 | 正常 |
1 | 注意・記憶障害の自覚のみ37 |
2 | 注意・記憶障害を認めるが、時間・場所の見当識は良好37 |
3 | 時間・場所の見当識障害を認める37 |
4 | 状況に対する見当識は全くない、または意味ある会話が成立しない37 |
排尿障害の評価
4. 診断と治療の流れ
画像診断
タップテスト(髄液排出試験)
診断の決め手となる検査:
シャント手術
根本治療法:
5. 薬剤師からの専門的アドバイス
早期発見のポイント
薬剤師からの重要な注意点:
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転倒は重要なサイン:高齢者の転倒はiNPHを疑うきっかけとして十分4
薬物治療の限界
現実的な理解:
見逃しを防ぐために
家族・介護者への助言:
薬剤師ができるサポート
実践的なアプローチ:
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服薬状況の確認と家族への情報提供
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地域包括支援センターとの連携
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適切な医療機関への紹介タイミングの判断
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転倒リスクのある薬剤の見直し
まとめ
特発性正常圧水頭症は「治る認知症」として、早期発見が極めて重要です。このチェックリストを活用し、3つの症状のうち1つでも該当する場合は専門医の受診を検討してください4。
薬剤師として強調したいポイント:
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薬では治せないが、手術で劇的に改善する可能性がある
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「年のせい」と諦めずに、積極的な診断・治療を
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転倒による骨折で寝たきりになる前の早期対応が重要
家族みんなでこのチェックリストを共有し、「治る認知症」を見逃さない知識を身につけることが、健康長寿の鍵となります。
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